朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
「二時間は、“もう少し”じゃないじゃない」
「そう思うのなら、今のうちに本でも読んだらいかがですか。敵国──いえ、シャイレンドルフの言葉、まだまだ怪しいのでしょう?」
「話せるようにはなったわ」
まだ難しい綴りとか、シャイレンドルフ独特の言い回しとか慣用句とか、そういうのはわからないけど。
「それだけでは王妃としての務めは果たせませんぞ」
伯爵は呆れたような顔でこちらを見たけど、私は本を読む気にはなれなかった。
こんなにがたがた揺れる馬車の中で細かい字なんか読んだら、気分が悪くなっちゃう。
ずっと続く山道。おそらく、国境が近くなってきたのだろう。目的地に近づくにつれ、どんどん緊張が増してくる。心臓がゆっくり握りつぶされるような圧迫感を胸に感じる。
なぜなら私は今、敵国の王を暗殺しに行く途中なのだから。