朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
**side Edgar**
「ミリィ!」
なんてバカなことを。倒れたミリィに駆け寄ろうとすると、腕を強く引かれた。
「国王陛下、これを」
「お前は……!」
そこにいたのは、かつて俺を刺そうとした老人。ボートレイト伯爵だった。なぜ彼がここに? アミルカにいたはずでは?
「あの毒を中和する薬です。早く!」
伯爵の言葉を疑っている暇もない。ミリィに駆け寄り、上半身を起こさせる。片手で持った瓶のふたを口で咥え、歯に力を入れて抜いた。
ぐっとその中身を自らの口に含む。何とも言えない薬草の嫌な匂いがしたが、気にしている暇はない。ミリィの紫色に変色していく唇をこじ開け、自らの唇を押し付ける。口の中にある薬を流し込むと、何とかむせずに喉を通過していったようで、こくりとか細い音がした。
「ミリィ、ミリィ。返事をしろ」
ぱしぱしと頬を叩くが、返事はない。長いまつ毛は閉じられたままで、指先は冷たい。
どうしてだミリィ。なぜこんなことになった。この国で起きたことの責任は俺が取るべきだろう。なぜお前が死ななければならない。ミリィの細い体を強く抱きしめる。
「バカなやつ……」
俺は元敵国の王。お前の父の仇だろう。そんな俺のためになぜ、命をかけたりする。
お前だけは幸せにしたかった。傍にいてほしかった。笑っていてほしかったんだ。
生きることが、俺を見放したこの世界への報復だと思っていた。けれど、お前を守れるなら報復なんてどうでも良かったのに。
涙は出ない。ただ彼女を失うことが怖くて、指先が震えた。俺はこんなに、弱かったのか……。