朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
返事をすると、男性はにこりと笑った。
「やっぱり。覚えてないかな。俺、ラッセル。エドガーの弟。あなたがこの国に来た日、国境まで迎えに行った一団の中にいたんだけど」
全然覚えてない。あんまり似ていない兄弟ね。あのときはとにかく狼が怖くて、突如現れて助けてくれたエドガーに目を奪われて……。
いやいやいや、待って。目、奪われてなんかないから。決して、見惚れてなんかないから。
「申し訳ありません。あの時は狼が怖くて」
「あはは、正直な人だな。で、そのうち王妃になるあなたがこんなところで何を?」
挨拶もそこそこに、ラッセルは私の手元にある物体を興味深げに眺めている。
「あ……えっとあの、いつもお役目を頑張っていらっしゃる陛下に甘いものでもと……」
「王妃自らの手作りか。あいつ意外に甘いもの食べるから、喜ぶよ。エドガーは幸せ者だな」
ラッセルはまるで町人のような言葉づかいでそう言うと、はははと明るく笑った。
「で、この瓶は何?」
「あっ……!」
ざっと体中から血の気が引いていくような気がした。ラッセルが指でつまみあげた小瓶は、毒薬が入っていた瓶だったから。
私のバカー! どうしてそんなもの、そんな見えやすいところに置きっぱなしにしておくのー!