綺麗な彼女はトゲを刺す
大きな街の外れにひっそりと佇む一軒の家。そこは所謂〝孤児院〟というやつで、身寄りのない子供たちが院長である一人の男と共に暮らしていた。
当時7歳の俺もそのひとりだった。
当時の事は今でも鮮明に覚えている。
「いんちょー、話ってなんだ?」
その日、俺は院長に〝話したいことがある〟と言われて院長の部屋を訪れたんだ。
そして、ティナに出逢うんだ。
「リト、ちょっとこっちにおいで。」
院長に手招かれ部屋に一歩足を踏み入れたとき、部屋の様子がいつもとは違うことに気がついたんだ。
「…いんちょー、誰?そいつ。」
部屋の真ん中のテーブルの近くに置かれた椅子の上に小さくなって座っていたそいつ。そいつの目には光が映っていなかった。
その人物が、ティナだった。
ここに来る奴らは大体あんな目をしている。俺がここへ来たときもあんな目をしていたんだと思う。
「この子はティナ、お前と同い年だよ。」
「ふーん…、今日からここにすむのか?」
「ああ、そうだ。ティナのことよろしく頼むよ、リト。」
そう言うと、院長はティナの背中に手を添え、ティナに向かって優しく微笑んだんだ。
「ティナ、この子はリト。リトは裏表のない子だからきっとすぐにみんなと仲良くなれる。
さあ、行きなさい。」
院長はティナの背中を子供をあやすようにポンポンと軽く叩いた。それでもティナは椅子から立ち上がろうとはしなかった。
いつの間にか俯いていて、最初見たときよりも小さく見えた。