綺麗な彼女はトゲを刺す
家の外に出ると、そこには10~12人くらいの子供が集まっていた。俺はティナの手を掴んだままその集団に駆け寄って声をかけた。
「おーい!かくれんぼやろうぜー!」
「おそいよ、リト兄ちゃん!」
俺の声に真っ先に答えたのは俺より1つ年下のアルだった。当時、この孤児院には男は院長と俺以外にはこいつしかいなかったからアルは誰よりも俺になついていた。
「ごめんごめん、アル。」
「…リト兄ちゃん、その子だれ?」
アルが早速、俺の後ろにいたティナを指摘した。他の連中も気付いたようで、辺りが騒がしくなっていった。
そんな周囲の反応に、ティナが体を竦めたのがわかった。
「こいつはティナ。今日からおれたちの家族だ!ちなみにティナはおれと同じ年だからな。お前らより年上だからな!」
「そうなんだ、じゃあティナ姉ちゃんだ!」
「…姉ちゃん…?」
そんなアルの言葉にティナは少し驚いたように呟いた。アルはそんな様子のティナを気にすることなく言葉を続けた。
「ぼくはアルって言うんだ!よろしくね、ティナ姉ちゃん!」
そういいながら笑顔で手を伸ばすアルを見て、ティナは恐る恐る手を伸ばした。
「ねえ、はやくやろうよ!かくれんぼ!」
そう声をあげたのは、当時4歳になったばかりのロアだった。そんなロアの声に驚いたティナは、アルへ伸ばしかけた手を退いてしまったんだ。
自分から行動したことはとても嬉しかった。今考えても大きな一歩だったと思う。でもやっぱり俺としては、そのまま手を伸ばしてアルの手を握って欲しかった。アルは人懐っこい性格だからすぐに誰とでも仲良くなれる。だからここで少しでもそうなって欲しかったんだ。