綺麗な彼女はトゲを刺す
「じゃあはじめるか!えっと、鬼はだれだっけ?」
「ぼくとロアだよ」
アルはそう言いながら手をあげた。それを見たロアも釣られるように手をあげたのが少し可愛いと思った。
「じゃあふたりは100数えたらスタートな。よし、みんなかくれるぞ‼」
俺のその声を合図にみんなが散り散りに家裏の森へ入っていく。
俺はアルとロアが数を数え始めたことを確認すると、後ろを振り返った。そこには案の定、呆然としたティナが立ち尽くしていた。そんなティナの手を掴み、俺は再び走り出した。
「ほら、早くかくれるぞ!」
「え…ちょっと…私、やるなんてひとことも…」
背後で小さく抗議するそんな反応が俺を喜ばせていたことなんて、この頃のティナは知らない。
突然孤児院に送られた子供は殻に閉じ籠ってしまう事がある。あの人懐っこいアルでさえ、ここへ来たばかりの頃は、感情を表に出すこともせず独り部屋に閉じ籠っていた。
だから、例え抗議の言葉でもティナが感情を出すことがとても嬉しかったんだ。