綺麗な彼女はトゲを刺す
俺はティナをつれて、家の近くの洞穴に隠れた。秘密基地みたいでこの場所が大好きだった。
「そろそろ100秒たつな」
洞穴の中の岩に寄りかかって一息つくと、ティナが初めてちゃんと俺に話しかけてきた。
「あの…なんで…。私、やるなんてひとことも言ってないのに…。」
ティナは恨めしそうな目で俺を見ていた。そんな様子のティナは気にせず、俺はずっと気になっていたことを問いかけたんだ。
「なあ、ティナはさ。なんでここに来たんだ?」
「…は?」
今考えても、だいぶ無神経なことを言ったと思う。孤児にとって、そうなったことを聞かれるのは最も残酷なことだと俺は知っていた。だから聞くからには、俺も話そうと思ったんだ。
「おれは、父さんと母さんがジョーハツ?ていうのをしたらしくてさ。よくわかんないけど。」
「え…ジョーハツって、蒸発…?」
その時のティナはとても驚いた顔をしていた。その顔を見て俺は、俯きそうになったんだ。
俺だって辛くない訳じゃない。当時の俺は蒸発の意味はわからなかったけど、捨てられたと言うことは理解できた。
辛い、辛い。出来ることなら、あまり考えたくない。でも、相手を知りたいならまず俺自身がしっかり前を見て話さなければいけない。
「そうそう、でさ。置き去りにされて家でたおれてたのを保護されたんだって。」