綺麗な彼女はトゲを刺す
「そう…なんだ…。」
「うん」
それっきり、ティナは黙り混んでしまった。少し俯いていて俺と目を合わせないようにしていた。それでも伝わってきた。ティナが必死に何かを考えていることが。
「私の…」
数分の沈黙を破ったのは、ティナのそんな声だった。ティナは顔を上げて、しっかりと俺の目を見ていた。俺はそれに応えるようにティナの目を見て、静かに耳を傾けた。
「私のお父さんとお母さんは…死んじゃったの。」
「うん」
「私の家、お金なかったんだって。そのせいで、いじめられてたんだって。」
「…うん」
「それが苦しくて、辛くて、悲しくて。」
「うん」
「お父さんとお母さん、ふたりで、…崖から飛び降りたんだって。」
「……うん」
「私、なにも知らなかったの。お父さんとお母さん、ずっと笑ってたから。…でも、それは私に心配させないためだったんだ…っ」
ティナはゆっくりゆっくり、自分について語った。泣きそうになりながら、涙がこぼれるのを必死で堪えながら語った。
「そっか」
俺はそう言うと、ティナの頭に手を置いてゆっくり動かした。ティナはそのまま顔をうつ向かせた。
「ありがとな、教えてくれて。」
地面に一粒の雫が落ちた。俺はそれに気づいていない振りをして洞穴の外を見た。そこには、雲1つない青空が広がっていた。
「…ここにはさ、おれたちみたいなやつがいっぱいいるんだ。
でも、ティナも見ただろ?ここいにいるやつらはみんな、笑ってるんだ。おれはこの孤児院ができたときからいるけどさ、みんなさいしょは泣いてるんだ。泣いて泣いて…かれるまで泣いて、それでいつの間にか、みんな笑ってるんだ。」
「…」