綺麗な彼女はトゲを刺す
「みんな忘れたわけじゃない。苦しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと。
そんな簡単に忘れられたら、だれもこんなに苦しんでない。
…苦しかったことを乗りこえて、新しく生きていこうと思ってるんだよ。」
この時のティナがどんな顔をしていたのかはわからない。でも、僅かに聞こえてきた嗚咽が、俺の言葉が確かにティナの心に届いたことを教えてくれた。
「大丈夫、ゆっくりでいいから。
おれも手伝うから、ゆっくり乗りこえていこ。それでいつか、ティナが心から笑った顔見せてよ。」
「……うんっ…」
遠くからアルやロア達のはしゃぐ声が聞こえてきて、俺は自然と笑みを浮かべた。
その日の空は、今まで見たどんな空よりも青く澄んだ色をしていた。