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それからの移動は
本当に何も感じない世界だった
どんな風景もモノクロにしか映らなかった
ようやく辿り着いた空港
飛行機に乗り込んで、席に座った
窓際席を選んで良かった。
ずっと外を見ていられる
何も考えずに、ずっと
けれど
離陸してから雲の中を進んでも
綺麗な空を見れば見るほど
あの人との想い出が蘇った
慌てて荷物を準備したから
ハンカチさえも持ち合わせていない
なのに、涙は留まることなく
溢れてやまない
最後に会った時の笑顔が
忘れられなかった
声を押し殺して窓の方だけ眺めて
それでも涙を拭い続けていた時
空がオレンジと赤を中心に
今まで見たこともない沢山の色が混ざり合って夕焼け色に見事に染まっていた
上空で夕焼けを過ごしたことが無かったから
あまりの美しさに目を絡ませた
温かな光と、黄金の色たちが眩しくて
とても優しくて、大きくて
まるであの人のような空だった
だから
届かなくてもこの空に伝えたいと思った
待っていて
すぐ会いに行くから
もうすぐだから
言いたいことは山ほどあるけど
やっぱり
ごめんね
それでも、ありがとう
忘れない
あの人がくれたもの全部
無くさない
あの人が教えてくれた心を
この空が、全部包み込んで
なんだかこんな自分をも許してくれるようで
あの人の困ったような
それでいてどこか嬉しそうな
独特の笑顔が浮かんで
とても愛しかった
抱き締めてあげたかった
こんな景色は二度とない
あの人一色だったのだから
美しくて、切なくて
今までで一番、温かな空だった
fin