エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
「それから、弥生が乗ったタクシーを調べて運転手に話しを聞きました。」

 黒沢は次から次へと、調べた事を報告していく。

 美佐子は、

(わずか半日でこんなに調べあげるとは…)

と頼もしいパートナーに満足していた。

「弥生は人通りの少ない電話ボックスを探して、誰かに電話をかけたそうです!時間は5分ぐらいだったそうですが、誰にかけたんでしょね!?」

「そうねーあの女の両親は健在だけど、勘当されているから、もしかけたらそんな短時間で終わるわけない。」

「ハイ。ありえません。」

「でも、元旦那の工藤はもっとありえないしね。」

「ハイ。絶対ありえません…多分ですが、火菜の事を望という女に教えたのでは!」

 黒沢は、望と面識はないが、そうに違いない!という確信はあった。

「そうね。あの女もいるわね!」

 美佐子は、素直に同意した。そして、

(望に違いないと思うと怒りの矛先がそっちにもいった。)
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