エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 中条が死んだ。



 その事は火菜、勇、弥生のそれぞれにも伝わったが、


「昨日の今日でそんなに急変するなんて!」

とそれぞれに考えていた。

 結局、明け方まで寝付けずにいた火菜の覚悟は決まりつつあった。

 そして今、中条の死が現実となって、

(よし!焦らず脱出の時を待つしかない。)

 そう思うのだった。

 この時、一番動揺したのはやはり、弥生で、

(昨日は、思い上がりかもしれないが、私が見舞った時は気力を取り戻して、だいぶん良かった、いえ、まだ今すぐどうこうという感じではなかったハズ。)

 そう思うと、自分が病院に行った事が、中条の最期を早めてしまったようで、悔やんでも悔やみきれない。

(しかし、もう後戻りは出来ないのだから、私は、あの子たちをここから逃がす事だけに集中しよう。)

 弥生のカウントダウンは始まった。
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