エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 すると、屋敷の中から一台の車が出てきた。

 美佐子を乗せた黒塗りの車が、滑るようにしなやかに、源の潜む目の前を通り過ぎていく。

 源は一目でも、美佐子の顔を見てみたいと、フロントガラスから、運転手の後ろに座っている美佐子の表情を捕えた。

(笑っている…)

 美佐子はうっすらだが笑みを称え、満足気な顔をしていた。

(こりゃあー完全に計られたな!ますます火菜たちが危ないぞ。なんとかして突破口をみつけなくては…)

 源の焦りはさらに加速した。

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