エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 そして、その株の運気は自分たちの為にも利用した。

 私達の唯一の味方の『おっちゃん』にも情報を教えた。

勝ち分は山分けにして、中条には内緒で金を貯め始めたのだ。

 おっちゃんは、中条の裏の仕事の仲介をする男で

『源(ゲン)』と呼ばれていた。

 おっちゃんは裏の世界やヤクザにも顔がきくが、風貌は冴えない腹の出た中年オヤジだ。

 度々、この屋敷を訪れるうちに私達に興味を覚えて近づいてきた。

 最初は警戒したが、驚く事に勇が懐いてしまったのだ。

 勇が、私以外の人に心を開いたのは初めてだったので、私も話す事にした。
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