エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
火菜は勇に貰ったペンダントの事より、久しぶりに会った母・望の事が強烈に残っていて、僅か数分の出来事だったが、映画のワンシーンのように1コマ1コマを思い出していた。
一度は自分を置いて、ここから出ていった母。
僅か6才でそれを無理矢理納得させられたようなものだった。
あの時は、最後まで泣かずに母を見送り、その後、勇と二人になってから思い切り泣いた。
段々と歳をとるにつれ、大人側の事情も少し飲み込めてきたけれど、『母に捨てられた』という心の傷はこれまで癒されずに今日まで生きて来たのだ。
しかし、その母が自分たちの窮地を救ってくれた。
弥生も勇の為に、自分の人生を投げ出して守っている。
勇は弥生を許したと言ってたけど、私も許せるかしら…。
いや、許したい。
そして、火菜は
(ここを出たら、いつの日かお母さんとその家族に会いに行こう!)
と思うのだった。
まだ、この時は勇も火菜も、源が捕まった事を知らなかった。
明日の『脱出』のパスポートは切れて、美佐子の用意した『不法入国』の道へのカウントダウンとなるのか……。
一度は自分を置いて、ここから出ていった母。
僅か6才でそれを無理矢理納得させられたようなものだった。
あの時は、最後まで泣かずに母を見送り、その後、勇と二人になってから思い切り泣いた。
段々と歳をとるにつれ、大人側の事情も少し飲み込めてきたけれど、『母に捨てられた』という心の傷はこれまで癒されずに今日まで生きて来たのだ。
しかし、その母が自分たちの窮地を救ってくれた。
弥生も勇の為に、自分の人生を投げ出して守っている。
勇は弥生を許したと言ってたけど、私も許せるかしら…。
いや、許したい。
そして、火菜は
(ここを出たら、いつの日かお母さんとその家族に会いに行こう!)
と思うのだった。
まだ、この時は勇も火菜も、源が捕まった事を知らなかった。
明日の『脱出』のパスポートは切れて、美佐子の用意した『不法入国』の道へのカウントダウンとなるのか……。