エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 望たちは、最初に集まったスーパーの駐車場まで戻ってくると、劇団テレビマンの一人一人にバイト料の5万を手渡し、労をねぎらった。

「ありがとう。見事ななりきり方だったな。今度、舞台の方も見に行くよ!」

 谷川が言うと、

「いいえ、こちらこそ。初めて役になりきれたきがします。」

「俺も!」

「私も!」

 劇団テレビマンたちがそう言うとみんなで笑った。

「いや〜本当に名演技だったよ。それじゃあ、器材などはこちらで返しておくから。」

と、カメラなどを受け取るとケンが、

「いやー困ったな。マイクを忘れてきてしまった。」
と言う。


 スピーカーをONにすると確かにまだ生きている。

 屋敷に近づけば充分音は拾えそうだ。これでまた中の様子が分かるぞ。

 谷川は、興奮して

「いやー君たちは絶対!将来売れっ子になれると約束するよ。」

と握手を求めた。

 置いてきたマイクの弁償は痛いが、それよりもいざとなれば助ける事が出来る事の方が大きかった。
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