エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 火菜は、朝から源が来るのを待ちわびていたが、その気配は一向になかった。

(おっちゃんは、無事に家族に会えたかな!?)

と、その事がとても気掛かりだった。

 そこに、黒沢が勇を連れて来ると、

「告別式が終わるまで一緒にいるように」

と言って、出て行った。

 これは、まさにこちらにとっては好都合だ。

 黒沢が出かけたら、おっちゃんがやってくる!

 そう、火菜は考えていたが、源はやってこない。

 たまらずに、勇に向かって、

「おっちゃん遅いね!」

と言うと、勇は

「大丈夫だよ!火菜。おっちゃんは約束を破らないよ。」

と言う。

「火菜?ここを出たら…」

 勇がそう言いかけた時に、ベランダの戸が開き、源が入って来た。

 源は多くを語らず、

「あの世から帰ってきたぜ!」

と、火菜と勇に向かって微笑んだ。

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