エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 源は、

「さあ!ここから出るぞ!すぐに準備に取り掛かるんだ。」

と火菜と勇に言った。

「うん!いよいよだね。」

 火菜は、ハヤる気持ちを押さえながらそう言った。

 源は、火菜のベットの下から、紙袋を取り出すと火菜と勇それぞれに携帯電話を渡した。

「これは、海外でも使えるケータイだ。何かあったら連絡がつくようにそれぞれ持っていよう!」

「そんな所に隠していたなんて全然気が付かなかったよ!」

と火菜は歓喜の声をあげた。

「実咲ちゃんと同じヤツだ。」

と勇が言うので、

「誰だ?ミサキって…」

と源には分からなかったが、火菜が

「テレビのドラマのヒロインだよ!勇はファンなんだよね。」

と言ったので、源にも分かった。

「うん!大好き!でも、火菜の次にね。」

と勇が言うので、張り詰めていた空気が和んだが、源は先を急いで、

「ケータイを実際に使うのは初めてだろうから簡単に説明しとくな。まず電源が…」と言いかけた時だった。

 突然、けたたましい女の声が屋敷中に響きわたった。

「勇!逃げてぇ〜!!!!」

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