エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 勇は逃げようと思えば逃げられたのだが、とっさに本能で、弥生を助けなければ!と思って飛び出していた。

 弥生の部屋に行くと、既に見張りの男が弥生を拘束していて、勇も後ろから来た男に捕まった。

 弥生が悲しそうに、

「勇、どうして逃げなかったの?」

と聞くと、

「だって!逃げるならお母さんも一緒だよ。」

 そう言った勇の瞳は輝いていて、後悔の影は微塵もなかった。

 そこに、男たちがやってきた。

(もう万事休すだ!)

と弥生は絶句した。

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