エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 望は、弥生と対照的な性格で、明るく活発な女性だった。

 しかも谷川家には、借金もない。

 ではなぜ、そんな望が代理母になるのか?

 谷川家には、一男一女がいたが、下の女児が心臓に爆弾を抱えていた。

 手術をすれば助かるが、その為には莫大な費用がかかる。

 そこに中条は目を付けたのだ。

 先に、望に話しを持ちかけてみた。

 どういう反応を示すか、中条は半信半疑だったが、望は意外に食い付いてきた。

 もちろんOKをもらうには時間を要したが、驚く事に、中条が返事を待つ喫茶店に、夫を伴って現われたのだ。

 丁度その頃、中条家は弥生の出産ですったもんだの大騒ぎ中だったので、中条は夫の出現が吉報をもたらすのか、それとも断りの為なのか、冷や汗をかいた。
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