エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 『どうですか?考えてくれましたか?』

 中条が聞くと、

 谷川はカチカチに体を堅くして、押し黙っていた。
 すると、望の方が事もなげに、

 「ハイ。実は私の口から主人に話して、この2週間毎日あーでもない、こーでもないと話し合っていたんです。それで返事が遅くなってしまいました。スイマセン。」

と、答えた。

 「いや〜仕方ないですよ。こちらがそれだけ深刻なお願いをしたのですからね。」

 最初の工藤家で、痛い目をみてる中条は、今回はあくまで低姿勢な構えだ。

 そして恐る恐る返事を催促した。

「それでどうなりました?」

 すると、やはり望の方が口を開いて、

「ハイ。私でよければお引け受けいたします。」

と、ハッキリと返事をした。
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