エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
「どうして、どいつもこいつも、普通の女でありながら役に立たないのよ!」

 望が屋敷の中で、秘かに出産を終えた部屋に、やってきた美佐子は半狂乱になって言った。

(今度こそは普通の男の子を!)

と、望んだのはそこにいる誰もが同じ気持ちだったが、こればかりはどうしようもない。

 すると、美佐子は望の目の前で、部下に向かって

「女ならいらない。見たくもないから殺して!」

と、いい放った。

部屋全体が重っ苦しい空気になり、誰もが押し黙っていると、

「勝手な事言わないで!妊娠して出産するのは大変な事なの。でも次は必ず男の子を生むわ!!だからこの子は、私が育てます。」

 望の気迫に圧倒されて、この時ばかりは美佐子も、承諾するしかなかった。
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