エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 いきなり病院に呼び出された源は警戒した。

 最近、中条が裏の仕事を頼む事は少なくなってきていたので、自分たちのたくらみが、中条に知られたのでは…と思ったのだ。

 しかし、呼び出された場所は病院で、しかも、ベッドの上の中条は、げっそりと衰弱しきっていた。

(人間ってたった数か月でこんなになるものなのか!?)

 表面はあくまで冷静を装いながら、源は中条の命令を待った。

「多分、これがお前に頼む最後の仕事だ。俺はガンだ。もうすぐ死ぬ。」

( 何だって!?)

 源は耳を疑った。

「お前に頼みたいのは、実は勇と火菜の事だ。」

「はい。」

「お前も美佐子の怖さは知ってるだろう?俺が死ねばあの子たちも消される。どうにかしてそれだけは避けたい。あまりにも哀れだろう?」

(アンタにも哀れみの心があったんですか!?)

 そう言いたいのをグッと堪えて、源は押し黙った。
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