エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
(ガンで死期が近づいた男の言葉だと信用してやりたいが、もしかして俺たちの企みを知って、それを阻止する目論みかもしれない。)

 しばらく源は考えると

「ハイ。それは自分もそう思います。でもそれは不可能でしょう。」

 そして、心の中で

(スイマセン。俺はアンタの部下です。同情もしますが、裏切ります。万が一でも火菜たちの脱出計画を失敗させるわけには行かないんです。でもあの子たちは必ず救いだしますから、安心して下さい。)

そう詫びた。

「そうか、なら仕方ないな。もう帰ってもいいぞ。」

 中条は、最後の糸が切れたと言わんばかりに、ガクリとうなだれた。
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