エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 その夜、中条家では、密談をする男女の姿があった。

「あの男も可愛そうだが仕方ない。しかし、問題はあの二人だろう。」

 そう言ったのが、大輔で

「それならもう考えてます。どの道あの子らには消えてもらうしかないし!」

 そう答えたのが美佐子だった。

「しかし、幼児ならともかくもうあんな年令だ。簡単に殺してしまえるわけじゃあるまい。ワシももう年だ。あまり血はみたくないからな!」

「分かっています。だから消えてもらうんです。知ってますか?東南アジアではまだまだ臓器売買が行われていること。」

「………」

「あんなにピチピチした新鮮な臓器はきっと高く売れるわ。」

「……………」

「私たちはあの子たちを、ヤミの業者に引き渡して、報酬をもらうだけでいいんです。簡単だわ。」

 そんな悪魔のような計画を、表情も変えずにサラりと話す美佐子が、我が娘ながら怖くなった大輔だった。
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