エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 そこにいたのは、……弥生だった。 

 この屋敷にいて、でも誰も気に掛ける事のない存在の女。

 でも、この話しを聞いている姿には、気がふれた感じはなく、目には力強い光が指していた。

 そして、

(ついに、恐れていた日が来た…出産の時から、私が精神異常を装う事であの子を守ってきたけれど、それも、中条がいなくなれば終わると思っていた。)

 弥生は気配を殺したまま、自分の部屋に戻ると、

(あ〜 一か八かあの人に真実を話して、あの子たちを救わなくては…)

 そう決意した。
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