エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 源は迷っていた。

 それは、中条の最後の頼みを聞かなかった事ではなく、火菜たちの戸籍の事だ。

 実は、火菜たちには変に期待を持たせてもと、まだ話さずにいたが、一つだけ戸籍のアテがあった。

 ただし、火菜の分だけだ。

 しかしそれで、火菜は幸せになれるのか?

という不安がある。

 けれど、この際、そんな事を言っている場合ではない。

 中条は自分で、余命三ヶ月だと言っていたが、源の見た感じでは、もうかなりヤバい。

 死が近づいた人間特有の顔の色と、匂いが漂っていた。

 もう、迷っている場合じゃないなー。

 火菜に話して、いよいよ最後の詰めだ!
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