エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
「とりあえず、勇は知り合いの施設に預けよう。」

「なーに心配はいらない。園長は知り合いだし、勇のような病気の子もいる。戸籍がみつかるまでの辛抱だ。」

 あくまで、一時的な措置と言われたら何も返す言葉のない火菜だったが、

 やはり、

(自分だけ?)

と、素直に喜べずにいると

 それを察した源が、

「なんか自分だけ戸籍をもらえない…って顔してるな。」

と、言った。

「うん。本音はそうだね。」

「でもな、お前さんの方も問題があって、戸籍を貰うと言うより、その娘になりきって生きて行く身代わりのようなもんなんだ。」

「身代わり?」

「そう!だから迷ってたんだ。」

「なんか色々と深い理由がありそうだね。聞かせて…」

「ああ、話すよ。」
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