エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
「勿論、この事は、両親以外は誰もしらない。」

(またしても、金持ちのエゴだ。そういう事は許されない。しかし、両親の気持ちは痛い程分かる。)

 火菜はそう思った。

「じゃあ私は、その未来さんの代わりにフリースクールに入ればいいのね。」

「ああ、そういう事だ。幸いまだ入学の予約だけで、書類の提出も、面接もしていなかったらしいから、今からでも間に合う。」

「とりあえず先方には、娘が精神的に参っているので、落ち着いてからと、待ってもらっているらしい……どうだ?火菜!未来さんの代わりになると言ってもかなり、難しいぞ!」

「……うん。そうだね。でも私、頑張って生きなおしてみるよ!未来さんの為にも自分の為にも。」

「分かった。お前ならそう言うと思ったよ。それじゃあ早速、児島さんと話してみるよ。」

 その時、廊下でパタンと扉を閉める音がした。

(こんな時間に誰!?)
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