エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 すると中は静まりかえっていて、何も返事がない。

 弥生は一か八かドアを開けて、そっと中に入ってみた。

 すると、中にはベットの上で苦しそうに喘ぐ中条の姿だけで、他には誰もいなかった。

 それでも弥生は恐る恐るベットに近づいた。

 中条は目を閉じていたが、荒い呼吸をしていなければもうこの世に存在していないかと思う程、どす黒い顔をしていた。

 すると中条は、いきなりカーッと目を見開き弥生を見ると、

「今ちょうど君の夢を見ていた。これは夢じゃないよな!また醒めたりしないだろうなー。」

と、目を擦ってみた。

「なぜ私がここにいるのか、あまり驚かれてないようですね。」

「ああ、そうだな。死ぬ前に君に会いたいと思ってたから本当にうれしいんだ。」

 中条は笑みを浮かべて、かすかだが頬が上気した。

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