エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》

「かばってもしょうがないから言うと、ヤツは今、行方不明だ。あの後もギャンブル三昧で女から女と渡り歩いていたが、三年程前から消息不明になった。」

　弥生は軽い眩暈に襲われた。

「おい、大丈夫か？」

「大丈夫です。」

「そうだ。おかしいぞ病人に心配されるなんて。」

「ですよね。」

「でも、なんで君みたいな人があんな男と結婚したんだ？」

「そうですね〜でもあの人も可愛そうな人なんです。天涯孤独で…でもうちの両親は大反対しました。両親とも教員なので堅いというか、今になって思えば、両親には分かっていたんでしょうね。だから目を覚まさない私に失望して、そして勘当されましたけど。」

「君の両親は健在だ。今はもうどちらも退職されて、弟さん夫婦と同居されているよ。あの屋敷を出たら帰ってみたらいい。」

「アナタはなぜ、私にそんなに良くして下さるのですか？」