エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 美佐子は、酒が強く、外で飲む事も多かったが、敢えてホストクラブは敬遠していた。

 たまにはイケメンの男たちに囲まれて、ハメを外してみたい気はしたが、これまで男性関係つまりはSEXの経験のない美佐子は、自分好みの男に持ち上げられて平静を保つ自信がなかったのだ。

(私だってれっきとした女だ!夫には、抱き寄せられた事すらないけど、このままでは、私は崩壊する。)


 そう思うと、もうどうしようもなくなって、金で男を買ってみたいと思った。


 そして、黒沢と出会ったのだ。
 黒沢は、普通のナンバーワンにある『華』もあったが、『影』の部分の方が大きかった。

 美佐子はそんな黒沢にすぐに目をつけると、指名した。

 ヘルプは誰もつけずに、二人で話しをした。

 そして、二人に共通する影の部分が呼応するかのように、互いに引かれ合った。

 二人が初めて一つになった日。

 美佐子は初めて、

(私の探し求めていたものをやっとみつけた。)

 隙間だらけの心が埋まった気がした。

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