エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 その弟、弘輔を抱き締め、そして無言のままお別れするしかなかった。

 正直に言うと、弘輔が嫉ましかった事もある。

 同じ父母から生まれてきたのに、男と女の違いだけで、一人は後継ぎとして、ちやほやされて大事に育てられた。

 もう一人は生かさず殺さずの監禁だったり放置だったりした。

 でも、弘輔がいたから、一緒に勉強を習う事も出来たし、その存在で暗かった屋敷の空気が変わったのは、まぎれもない事実だ。

今は、アナタの事が心配。

 だって結局は、私たちを置いて出て行った母と同じ事をしようとしてる私。

 ゴメンね

 ゴメンなさい。

 だから、最後に

「弘輔、もう泣いちゃダメだよ。強くなってね。」

 それだけ言って、またギュッと抱き締めてやったんだ。
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