エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
「スイマセン。報告が遅れまして…」

 夕方の六時頃になって、やっと黒沢から美佐子へ連絡が入った。

「いいえ、いいのよ。」

「例のペンダントですが、これは角度によって模様が変わる仕組みなので、実際手に取って動かしながらじゃないと、読むのは難しかったのですが、助かりました。角度を変えて、5枚も写してあったので、ちょうど5枚目がヒットしました。」

「それは良かったわ!で、何を意味するの?」

「ハイ。模様の中に浮かび上がる文字はアラビア文字で、『告発』と書いてあるそうです。」

「告発?告発と書いてあるの!?」

「ハイ。そうです。そしてあのペンダントはどうやらUSBらしく、何らかのデータが入れてあると思われます。」

「『告発』と書いてある『USB』……それで大体読めてきたわね。」

「ハイ。自分も美佐子さんの思う通りだと思います。」

(アナタと同じ事を考えています。)

と言われたようで、益々、美佐子は心強くなる。

「後少し調べたい事があるので、終わり次第駆け付けますので。」

「ええ、待ってるわ。」

 美佐子は、抜かりない黒沢の仕事ぶりにも満足していた。

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