H ~ache~
季節は夏。
福岡に来てから休みを取らずに仕事をしている環にとって、暑さは想像以上に体力を消耗させていた。
(一日の殆どを事務所の中で過ごしているけど、これが外回りをしていたら絶対にバテているだろうな)
外の焼けつくような日射しを見ながらペットボトルの水を飲み、また仕事にとりかかった。
仕事に没頭したいが為に眼鏡を外した環は目立っていた。
買収した会社の女性社員は制服を着用しており、私服の環は法務部のスタッフを含め、その場にいた男性社員からも注目された。
(お昼ご飯は何にしようかな…あんまり食欲わかない…)
時計を見ながらぼんやりと考え、時計の下に掛けてあったカレンダーに目が止まった。
(早瀬さんが帰国してから3日…あれから連絡がない。怒ってたから連絡が来るわけないわよね…)
「及川さん、お昼の事を考えているんですか?」
「…ばれちゃいましたか?何を食べようかなーって考えてました」
その場凌ぎの事を言い、環は愛想笑いを浮かべた。
「一緒に行きませんか?」
環はそうしようかと思い、男に頷いて返事をした。
昼食は殆ど男が話をし、環は聞かれることに当たり障りなく答えるだけだった。
いろいろな事を聞かれたが、環にとってはどうでもいいようなことばかりだった。
(味が良く分からないお昼だった…夜は一人で食べよう)
環はそう決めながら、事務所に戻る前に男と別れコンビニに寄った。
(お水とミント味のタブレット…)
必用なものを買い揃えて戻り、食後の化粧直しと歯磨きを終えて作業をしているフロアに戻ると、異様な雰囲気に歩みをすすめるのを戸惑った。
(何?この黒スーツの人達…)
環が仕事をしている部屋があるフロアには社長室と応接室があったが、スーツを着ている体格のいい男が廊下に数名立っていた。
「お疲れ様です…」
何となく見覚えがあるような気がする彼らに声をかけ、作業をしている部屋に入ると法務部の課長と高梁がいた。
「お疲れ様です。…どうされたんですか?」
何かあったのだろうか?
環が声をかけると法務部の課長は少し困ったような笑みを向けた。
「会長が進捗状況を気にされているんだ。今どうなっている?」
高圧的な言い方にムッとしたが、直ぐに課長達の側にいる人物に気をとられた。
「お疲れ様です、及川さん。会長は急がれているわけではないのですが…」
そう言うと高梁を見、見られた高梁は傍目からも分かる位にビクッと震えた。
中性的な顔立ちをした男はニコリと笑むと言葉を続けた。
「私共が誤解を与えるような指示をしてしまったようで申し訳ありません」
柔和な笑みで環に頭を下げると高梁に笑いかけた。
「課長達は別室でお話をさせて頂きたいのですが…及川さん、会長が来られますので現状の説明をお願いします」
早瀬の部下は課長達をつれて部屋を出ていってしまい、環は一人残された。
(来てるの?福岡に?……)
福岡に来てから休みを取らずに仕事をしている環にとって、暑さは想像以上に体力を消耗させていた。
(一日の殆どを事務所の中で過ごしているけど、これが外回りをしていたら絶対にバテているだろうな)
外の焼けつくような日射しを見ながらペットボトルの水を飲み、また仕事にとりかかった。
仕事に没頭したいが為に眼鏡を外した環は目立っていた。
買収した会社の女性社員は制服を着用しており、私服の環は法務部のスタッフを含め、その場にいた男性社員からも注目された。
(お昼ご飯は何にしようかな…あんまり食欲わかない…)
時計を見ながらぼんやりと考え、時計の下に掛けてあったカレンダーに目が止まった。
(早瀬さんが帰国してから3日…あれから連絡がない。怒ってたから連絡が来るわけないわよね…)
「及川さん、お昼の事を考えているんですか?」
「…ばれちゃいましたか?何を食べようかなーって考えてました」
その場凌ぎの事を言い、環は愛想笑いを浮かべた。
「一緒に行きませんか?」
環はそうしようかと思い、男に頷いて返事をした。
昼食は殆ど男が話をし、環は聞かれることに当たり障りなく答えるだけだった。
いろいろな事を聞かれたが、環にとってはどうでもいいようなことばかりだった。
(味が良く分からないお昼だった…夜は一人で食べよう)
環はそう決めながら、事務所に戻る前に男と別れコンビニに寄った。
(お水とミント味のタブレット…)
必用なものを買い揃えて戻り、食後の化粧直しと歯磨きを終えて作業をしているフロアに戻ると、異様な雰囲気に歩みをすすめるのを戸惑った。
(何?この黒スーツの人達…)
環が仕事をしている部屋があるフロアには社長室と応接室があったが、スーツを着ている体格のいい男が廊下に数名立っていた。
「お疲れ様です…」
何となく見覚えがあるような気がする彼らに声をかけ、作業をしている部屋に入ると法務部の課長と高梁がいた。
「お疲れ様です。…どうされたんですか?」
何かあったのだろうか?
環が声をかけると法務部の課長は少し困ったような笑みを向けた。
「会長が進捗状況を気にされているんだ。今どうなっている?」
高圧的な言い方にムッとしたが、直ぐに課長達の側にいる人物に気をとられた。
「お疲れ様です、及川さん。会長は急がれているわけではないのですが…」
そう言うと高梁を見、見られた高梁は傍目からも分かる位にビクッと震えた。
中性的な顔立ちをした男はニコリと笑むと言葉を続けた。
「私共が誤解を与えるような指示をしてしまったようで申し訳ありません」
柔和な笑みで環に頭を下げると高梁に笑いかけた。
「課長達は別室でお話をさせて頂きたいのですが…及川さん、会長が来られますので現状の説明をお願いします」
早瀬の部下は課長達をつれて部屋を出ていってしまい、環は一人残された。
(来てるの?福岡に?……)