H ~ache~
一時間が経過した頃、早瀬の付き人が二人部屋に入ってきた。
「一時間が経ちました。及川さんと高橋さんは仕事を終えて下さい」
「休みは明日からですよね?」
抗議の意味を込めて側近に問いかけると、中性的な顔立ちの男が頷いた。
「それなら、まだ仕事をさせて下さい」
無表情な側近が環を見、次に法務部の担当に視線を向けた。
「お二人ともお疲れの様子なので今日は休まれるようにと会長がおっしゃっています」
環も法務部の担当を見ると、疲れた顔をしているのが見てとれた。
彼の為にはおとなしく言うことを聞いた方がいいのかもしれないと考え、素直に引き下がった。
「分かりました。課長、よろしくお願いします」
「分かった。ゆっくり休め」
二人は後片付けをし、部屋を出た。
「高橋さんはこちらへどうぞ。及川さんはホテルまでお送りします」
そう言われ逆らっても無駄だと思い、側近の言葉に従った。
無表情な側近が環に付き添い、ビルを出ると車に乗るように促した。
環が宿泊しているホテルも早瀬が所有していると聞いていた。
車がホテルに到着すると恭しく出迎えられ、環は『ありがとう』と礼を言いホテルに入った。
「お部屋にご案内します。こちらへ…」
(部屋なら分かるのに…仕事に戻ると思われてるのかな…)
環は案内の後に続いて中へ進んだ。
「早瀬様からお話があるそうです。お疲れのところを申し訳ありません。少しお付きあい下さい」
そう言われて連れてこられたのは最上階から2つ下のフロアだった。
エレベーターから見て、一番奥にあるドアの前に立つと、逃げ帰りたい気持ちになったが、ドアを開けられ、部屋に入るしかなくなった環は、躊躇いながら部屋に入った。
「…失礼します」
入口からでもこの部屋からの展望が素晴らしいのが分かり、窓から広がる景色に思わず足が止まった。
「こっちだ」
声のする方を見ると、広いリビングのソファに早瀬は座っていた。
「座れ」
環がソファの向かいに座ろうとすると、腕を引かれて隣に座らされた。
側近が控えていた。
環は恥ずかしかったが、きっと早瀬は気にしないのだろうと思い、なるべくその男の事を考えないように努めた。
「及川様、どうぞ」
目の前にティーカップを出され、早瀬は飲むようにすすめた。
「いただきます」
(あ、ハーブティーだ。…美味しい)
男は早瀬にコーヒーを出し、部屋から出ていった。
「早瀬さん、ありがとうございました」
課長への反抗心からああ言ったが、法務部の男は専門知識があるわけではなく、一人でこの仕事を進めている状態だった。
疲れすぎると眠れないと聞いていたが、環も熟睡出来ずに日々疲労が蓄積されていた。
「酷い顔だな」
「…」
自覚はしていたが、面と向かって言われるとショックだった。
「女の体力は男と違う。無理をしてもしょうがないだろ」
またも理にかなった事を言われ、環はコクリと頷いた。
「それでもやるのがお前らしいがな…」
くしゃりと頭を撫でられ、環は自覚し、諦めた。
「一時間が経ちました。及川さんと高橋さんは仕事を終えて下さい」
「休みは明日からですよね?」
抗議の意味を込めて側近に問いかけると、中性的な顔立ちの男が頷いた。
「それなら、まだ仕事をさせて下さい」
無表情な側近が環を見、次に法務部の担当に視線を向けた。
「お二人ともお疲れの様子なので今日は休まれるようにと会長がおっしゃっています」
環も法務部の担当を見ると、疲れた顔をしているのが見てとれた。
彼の為にはおとなしく言うことを聞いた方がいいのかもしれないと考え、素直に引き下がった。
「分かりました。課長、よろしくお願いします」
「分かった。ゆっくり休め」
二人は後片付けをし、部屋を出た。
「高橋さんはこちらへどうぞ。及川さんはホテルまでお送りします」
そう言われ逆らっても無駄だと思い、側近の言葉に従った。
無表情な側近が環に付き添い、ビルを出ると車に乗るように促した。
環が宿泊しているホテルも早瀬が所有していると聞いていた。
車がホテルに到着すると恭しく出迎えられ、環は『ありがとう』と礼を言いホテルに入った。
「お部屋にご案内します。こちらへ…」
(部屋なら分かるのに…仕事に戻ると思われてるのかな…)
環は案内の後に続いて中へ進んだ。
「早瀬様からお話があるそうです。お疲れのところを申し訳ありません。少しお付きあい下さい」
そう言われて連れてこられたのは最上階から2つ下のフロアだった。
エレベーターから見て、一番奥にあるドアの前に立つと、逃げ帰りたい気持ちになったが、ドアを開けられ、部屋に入るしかなくなった環は、躊躇いながら部屋に入った。
「…失礼します」
入口からでもこの部屋からの展望が素晴らしいのが分かり、窓から広がる景色に思わず足が止まった。
「こっちだ」
声のする方を見ると、広いリビングのソファに早瀬は座っていた。
「座れ」
環がソファの向かいに座ろうとすると、腕を引かれて隣に座らされた。
側近が控えていた。
環は恥ずかしかったが、きっと早瀬は気にしないのだろうと思い、なるべくその男の事を考えないように努めた。
「及川様、どうぞ」
目の前にティーカップを出され、早瀬は飲むようにすすめた。
「いただきます」
(あ、ハーブティーだ。…美味しい)
男は早瀬にコーヒーを出し、部屋から出ていった。
「早瀬さん、ありがとうございました」
課長への反抗心からああ言ったが、法務部の男は専門知識があるわけではなく、一人でこの仕事を進めている状態だった。
疲れすぎると眠れないと聞いていたが、環も熟睡出来ずに日々疲労が蓄積されていた。
「酷い顔だな」
「…」
自覚はしていたが、面と向かって言われるとショックだった。
「女の体力は男と違う。無理をしてもしょうがないだろ」
またも理にかなった事を言われ、環はコクリと頷いた。
「それでもやるのがお前らしいがな…」
くしゃりと頭を撫でられ、環は自覚し、諦めた。