H ~ache~
(私…この人の事が好きなんだ。色々理由をつけて考えないようにしていたけど、無理みたい)
早瀬の顔を見ると俯き、観念したように小さく息を吐いた。
「なぜこの仕事が環に振られた?」
「…分かりません。福岡に行く為にはクライアントに予定変更をお願いしなければいけません。一番都合がつけやすいのが私だと思われたのではないでしょうか」
本当の理由は知らないが、いつも高梁は会長絡みの仕事は環に回してくる。
だから今回も回されたのだと思っていた。
それよりも、早瀬は福岡で仕事があったのだろうか?
環は整った横顔を見つめた。
「なんだ」
「…福岡でお仕事があったんですね」
早瀬はフッと笑い、環の頬にかかっていた髪を指ですくい耳にかけた。
「強情なおまえの事だ、根を詰めているような気がした…部下達にも休暇を与えたかったから丁度いい」
東欧に行っていたことを思いだし、環は頷いた。
部下を思いやれる事には好感が持てる。
「それを飲んだら夕飯まで寝ろ」
「はい」
その後ハーブティーを飲み終え自分の部屋に戻ろうとしたが、早瀬はここにいろと言い出した。
「荷物が…」
(お風呂に入りたい。着替えもないし…どうして部屋に戻れないの?)
「荷物は運ばせる。それでいいだろ」
「私がここに泊まるんですか?」
「ベッドルームは二部屋ある。問題はない」
平然と言う早瀬に環は面食らった。
(この人、本当に断られるとか考えてないのね…)
「何か言いたいのか?」
「いえ…」
言っても無駄だと悟り、環は気づかれないように溜息をついた。
(私って何なんだろう…ペットとか所有物みたいじゃない?)
「風呂に入るか?」
「入りたいです」
「一緒に入るか…」
「一人で入ります!」
呟くように言う早瀬に環は焦って言い返すと、早瀬は「今日は許してやる」と言い、環をバスルームに連れていった。
「ジャグジー…」
窓からは景色が見渡せ、海が見えた。
「ゆっくり入れ。荷物はすぐに運ばせる」
一人バスルームに残され、環はのんびりとお湯に浸かった。
(夜景も綺麗だろうな…)
強すぎる冷房と仕事で凝り固まった首や肩を擦りながら身体を温めた。
風呂からあがりバスローブを身につけてバスルームを出ると、サニタリールームに自分のスーツケースが置いてあるのを見つけた。
スーツケースからルームウェア代わりにしていたワンピースを引っ張り出し着替えてリビングに戻った。
「お風呂をいただきました…」
「環の部屋はこっちだ」
早瀬の後についていくと、ダブルベッドが置かれた落ち着いた雰囲気の部屋だった。
「ここにいる間は好きに使え」
カードキーを渡され、環は気になっていた事を聞いてみた。
「私が泊まっていた部屋はどうするんですか?」
「そのままだ」
(使わないならキャンセル…それだと私が早瀬さんの部屋にいることがばれちゃうか…)
「お前をあの部屋に置いておくとあの男が誘いに来るだろ」
「法務部の担当ですか?」
「そうだ」
(ゆっくり休むと思うんだけどな…私ならそうする)
環は早瀬の心配を他所に見当違いの事を考えていた。
「…もう休め」
風呂から出て体がだるく感じていた環は素直に頷いた。
「オレは出かける用事がある。目が覚めたら連絡しろ」
「はい。行ってらっしゃい」
早瀬が軽いキスをして部屋を出ると、環は頬を染め、ベッドに潜り込んだ。
早瀬の顔を見ると俯き、観念したように小さく息を吐いた。
「なぜこの仕事が環に振られた?」
「…分かりません。福岡に行く為にはクライアントに予定変更をお願いしなければいけません。一番都合がつけやすいのが私だと思われたのではないでしょうか」
本当の理由は知らないが、いつも高梁は会長絡みの仕事は環に回してくる。
だから今回も回されたのだと思っていた。
それよりも、早瀬は福岡で仕事があったのだろうか?
環は整った横顔を見つめた。
「なんだ」
「…福岡でお仕事があったんですね」
早瀬はフッと笑い、環の頬にかかっていた髪を指ですくい耳にかけた。
「強情なおまえの事だ、根を詰めているような気がした…部下達にも休暇を与えたかったから丁度いい」
東欧に行っていたことを思いだし、環は頷いた。
部下を思いやれる事には好感が持てる。
「それを飲んだら夕飯まで寝ろ」
「はい」
その後ハーブティーを飲み終え自分の部屋に戻ろうとしたが、早瀬はここにいろと言い出した。
「荷物が…」
(お風呂に入りたい。着替えもないし…どうして部屋に戻れないの?)
「荷物は運ばせる。それでいいだろ」
「私がここに泊まるんですか?」
「ベッドルームは二部屋ある。問題はない」
平然と言う早瀬に環は面食らった。
(この人、本当に断られるとか考えてないのね…)
「何か言いたいのか?」
「いえ…」
言っても無駄だと悟り、環は気づかれないように溜息をついた。
(私って何なんだろう…ペットとか所有物みたいじゃない?)
「風呂に入るか?」
「入りたいです」
「一緒に入るか…」
「一人で入ります!」
呟くように言う早瀬に環は焦って言い返すと、早瀬は「今日は許してやる」と言い、環をバスルームに連れていった。
「ジャグジー…」
窓からは景色が見渡せ、海が見えた。
「ゆっくり入れ。荷物はすぐに運ばせる」
一人バスルームに残され、環はのんびりとお湯に浸かった。
(夜景も綺麗だろうな…)
強すぎる冷房と仕事で凝り固まった首や肩を擦りながら身体を温めた。
風呂からあがりバスローブを身につけてバスルームを出ると、サニタリールームに自分のスーツケースが置いてあるのを見つけた。
スーツケースからルームウェア代わりにしていたワンピースを引っ張り出し着替えてリビングに戻った。
「お風呂をいただきました…」
「環の部屋はこっちだ」
早瀬の後についていくと、ダブルベッドが置かれた落ち着いた雰囲気の部屋だった。
「ここにいる間は好きに使え」
カードキーを渡され、環は気になっていた事を聞いてみた。
「私が泊まっていた部屋はどうするんですか?」
「そのままだ」
(使わないならキャンセル…それだと私が早瀬さんの部屋にいることがばれちゃうか…)
「お前をあの部屋に置いておくとあの男が誘いに来るだろ」
「法務部の担当ですか?」
「そうだ」
(ゆっくり休むと思うんだけどな…私ならそうする)
環は早瀬の心配を他所に見当違いの事を考えていた。
「…もう休め」
風呂から出て体がだるく感じていた環は素直に頷いた。
「オレは出かける用事がある。目が覚めたら連絡しろ」
「はい。行ってらっしゃい」
早瀬が軽いキスをして部屋を出ると、環は頬を染め、ベッドに潜り込んだ。