未知の世界5
「ゲホッケホッケホッ」
ここ最近冷たい風が朝晩吹き付ける。
暖かくなっている医局に入ると咳が出始めた。
すぐに治ったのでホッとしていると、当直明けの早川先生に見つかってしまった。
「大丈夫?ちょっと診察しよう。」
医局のミーティングルームに促されたけど、大丈夫ですと答える。
そんなことは全く聞いてもらえず、結局ミーティングルームのソファに腰掛ける。
「ごめんねー。」
と胸元からの聴診。
「はい、いいよー。」
脇に挟んでいた体温計を渡す。
「胸の音も肺の音もいいし、熱もないから大丈夫そうだけど、今日は無理せず、仕事が終わったら早く帰るんだよ。」
いつも帰ってるんだけど…。いや、そうではない。帰りに担当患者の部屋に行って、話してから帰る。
早川先生は、それを知ってて言っているのだろう。
『あ、今日当直なので、明日は早く帰ります。』
「そうだったね。今日は小児科三人の当直だから、無理せず当直する先生に体調が悪くなったら言うんだよ。いい?」
『…はい。』
私が他の先生に言わないであろうことはお見通しのように私を見た。