未知の世界5

「で、なんでこんなことになるまで黙ってたんだ?」








軟膏を塗り終えた孝治さんと進藤先生は仰向けの私を覗き込むように立っている。







『紅茶がかかってすぐに見たときは、こんなことになっていなかったし、お風呂の時も赤くなってるだけだったから…。』








うん、嘘じゃない。
付け加えるとしたら、進藤先生に診られることが恥ずかしかったんだけど。
結果的に診られてしまったけど。







「前にもヤケドしたことあるんだから、分かるだろう?それに、お前はっ」








言いかけて止めた孝治さん。









その続きは言わなくても…そこまで言われれば充分なんだよね…。







言ってしまってからハッとする孝治さん。






今回入院したのは、患者さんに移されたウイルス性肺炎。
医者が毎回患者さんから病気もらってたら、全然ダメだよね…。
他の先生でこんなことになった人、聞いたことないしさ。
あの時マスクをしっかりして、診察の後にいつもより念入りにうがい手洗いしてたら、もしかしたら移らなかったかもしれない…。
本当に、何してんだろう私。

今もヤケドをほかっておいて水膨れにして怒られて。
こうなるって分かってるのに。





ホントに医者なのにね、私…。








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