未知の世界5
眼が覚めると、冷たい風が顔に吹き付け、周りは赤いライトが広がっていた。
「あら、かな先生久しぶり。」
覗き込んだ顔は救命の先生や看護師さん。
部屋で寝ていたのに、なぜ病院…しかもこの赤いライトにこのメンツは…。
顔を横に向けると、寝る前に家にいた進藤先生と白衣姿の孝治さん。
仕事中にはいつも表情を変えない2人が、不安そうな顔でこちらを見て立っている。
そうか、救急車で運ばれたから、救命なんだ。
寝る前よりもどっと重くなった体にドキドキしっぱなしの心臓に胸をやる。
「胸苦しいかな?」
救命の先生が大きな声で聞く。
苦しくはないけど、何だかザワザワが止まらない。
そう言いたいけど、口がカピカピで言葉が出ない。
腕に刺される点滴、胸に付けられる機械。同時にエコーまでも。
エコーを手にするのは…
今朝診察してくれたお父さん。
いつの間に。
「うん。心拍は早まってるけど、心臓自体は異常なさそうだね。」
『ありがとうございます。』
何で運ばれているか分からないけど、体の異変には、気づいてる。
どっと重たい体が、少しずつ楽になっていく。
お父さんから救命の先生が代わって処置を続ける。
お父さんを見上げると、何も言わずに頭を優しく大きな手で撫でられた。