未知の世界5
りさちゃんの病室へ行く足取りが重い…。
違う、違う、ヤツではないんだから。
大丈夫、大丈夫……大丈夫……。
落ち着かせようと自分に声をかける。
気づくと足が止まっていた。
あと数メートルで部屋に着く。
『大丈夫だから。もうあの時の館長さんはこの世界に出てこられないから、大丈夫。』
背中を優しく触られる。
横を見ると医局長が並んで立っていた。
医局長は私が初めてここに入院した時から知っている。私の素性全てを。
りさちゃんを担当した時から気にしてくれていた。
さっきの電話で私の様子を見ていてくれたみたい。
『私も一緒に行こうか?』
「いえ、もう大丈夫です。ありがとうございます。」
もう一度背中を優しくさすられ、私は深呼吸をすると足を一歩踏み出した。
うん、大丈夫。もし、もし目の前でどうにかなってしまっても、医局長がきっと来てくれるから。
大きな存在をそばに感じ、私はまっすぐりさちゃんの部屋に向かった。