未知の世界5
このまま医局にいても何か言われるだけだから、と医局を出た。
私の行く場所なんて限られている。
今、このイライラした状態で病棟に行く訳にはいかないので、検査室に向かった。
この土日の風邪も治ったけど、気になるしね。
それに自ら吸入に行ったことがないって言われるのも嫌だし。
ちゃんとこうやって行けるんだからっ。
ブツブツ言いながら検査室に着くと、まだ開いていた。
いつものように……いや、だけど今日は誰もいないし、マスクじゃなくても…と、筒状タイプのもので吸入を始める。
途中、途中でむせるけど、発作を引き起こすような咳ではなかった。
「ふぅ、終わった。」
吸入を終えて医局に戻ると、当直の先生しか残っていなかった。
ホワイトボードに目をやると、今日は中堅の先生方で飲み会らしい。
私には関係ないけど、幸治さんや早川先生、石川先生はその飲み会に参加する。
もういないなら、と仕事を始めた。
と言っても、プロジェクトに向けての練習だけど。
だいたいの器具は覚えた。
手術の手順も基本的なものは覚えたし。
あとは縫合の仕方とか、それぞれ器具の使い方。手さばきを動画で見たり、実践して練習する。
………………
『ふぅ。』
一息ついて時計に目をやると、
『わっ!こんな時間!』
23時……。
慌ててロッカーに向かい、着替えて病院を出た。