未知の世界5
プロジェクト終了から数日が経ったある日。
『おぉ、佐藤くん。ごめんごめん。検診忘れとったわ。』
笑いながら小児医局に入ってくる加藤先生に、それを知らなかった先生方が、えっ!?という顔で私を見る。
そうです……。検診、かれこれ一か月以上はやってません…。
加藤先生は日にちを決めるとスタスタと歩いて医局を出て行く。
『お前…検診なくても黙ってたのか?』
隣の石川先生が、ボソッと聞いてくる。
「は、はい。まだないのかなぁとは思ってましたけど、体調は良かったので。」
『自分で言えよ……。俺が気になって加藤先生に言わなきゃ、進藤先生が帰ってくるまでないところだったぞ。』
「すいません……。」
悪意たっぷりで黙っていた。
だって、私にはあまり好きなものではないから。
『まぁ毎日吸入してるみたいだから、ひどくはないだろうけだな。』
そういうと、医局を後にする石川先生。
このやりとりを机の反対側で聞いていたのは……。
幸治さん。
めっちゃ睨んでる……。
その視線から逃げるように、病棟へ回診に向かった。