未知の世界5

そこにいたのは……。








「し、進藤……先生。」








今までに見たことのない怒った顔……。







なぜ先生がここに。








『なぜ勝手に帰ってるの?』








段々と近づいてくる進藤先生。







「えっと……、検診自体は終わってたので。いつまで経っても点滴ばかりだったので。」








パシッ!








え?









何が起きたか分からなかった。








数秒後、進藤先生に頬を叩かれたことを理解したけど、何も言葉が出てこない。







なんで、私が叩かれなきゃいけないの?








なんだか虚しい気持ちになり、涙が頬を伝った。







『勝手に点滴を抜くなんて、医者だったらそんなことしてはいけないって分かるだろ!?』








「…………。」








『僕のいない間の検診のことも、どうして自分から加藤先生に声をかけないんだ?』








「…………。」








『これから、病院戻るぞ!』








こんな怒ってる進藤先生は、初めて見た。







でも、私は検診終わったから帰ってきただけ。どうしてここまでされなきゃならないの?








と進藤先生を避けて、部屋に向かおうとする。








『ダメだ!』








強く腕を掴まれる。








うっ!









ッつーーーー!









一瞬だけど、また胸がキュッとなった気がした。








だけど、少しでも胸を掴めば病院は確実。







何とか何事もなかったかのように振る舞う。







『検査結果は出てる。それも踏まえて病院に戻るから。』








「…………。」









悪かったんだ……。








だから、今言わないんだ。









何とかこの状況を良い方に向けれないか考えたものの、ものすごい恐ろしい顔と態度の進藤先生に連れられ、私は先生の車に乗せられ、病院に向かった。
< 326 / 393 >

この作品をシェア

pagetop