未知の世界5

『おはようございます。』







ハッと目を覚ますと、朝を迎え、部屋には看護師と進藤先生がいる。







「おは……ゴホッ、おはようございます。」






泣いて寝たせいか、喉が渇いて声がうまく出なかった。





咳払いを軽くすると、完全に風邪の時の咳が出てきた。







風邪を否定したいがために、もう一度咳をしてみる。







「ゴホッ……ゴホゴホッ」








う……やってしまった。完全に風邪だ。








寝ながら泣いて、そのまま喉を痛めてしまったのか、風邪まで引いてしまった。







せっかく熱が引いてたのに。








でも、幸い熱はなさそう。








『吸入しとこうか。』








独り言を言うかのように呟いた進藤先生は、その後看護師に薬と吸入の用意をさせる。








『幸治くんから、鉄剤のことを聞いたから。朝食と夕食の後に一錠ずつ飲んで。』






「……はい。」








声を出すのが辛い……。








『大きな口を開けて。』








少し痛む喉。大きく口を開ける。







『薬塗っておくから。』






そのままカートから出してきた薬を、喉の奥に入れられる。






ぅわっ!!!







と同時に







「ォエッ!!!」







吐き気と共に、胃から何かが押し上げてきて、布団の上に出してしまった。







出てきたものは、食べた物ではなく黄色い胃液。







口の中が苦い。







『大丈夫?口、ゆすぐ?』







そう言われ、返事をして部屋にある洗面台に向かうため、ベッドから起きようとすると、







グラッ






体が大きく傾き、進藤先生に倒れかける。






ギリギリのところで進藤先生に体を支えられる。






まだ治ってなかったんだった……。







そうだよね。貧血の症状は、一度出ると簡単には治らないからね。








進藤先生に支えられながら洗面台に行き、うがいをしてまたベッドに戻る。







体力がないのか、それだけで疲れる。






ベッドに仰向けになると、看護師に吸入マスクをつけられると、スイッチが入る前に眠りについた。






< 358 / 393 >

この作品をシェア

pagetop