未知の世界5
療養
ブロロロロロ……。
ハッ!?
え?ここ、どこ?
全く知らない街を走っているバス。
目を覚ましてキョロキョロしている自分に、周りの人が私を見ている。
う……恥ずかしい。
たぶん私がバス停を寝過ごしたことに気づかれたんだ。
そう思うと恥ずかしくなり、知らない街であったものの、すぐに停留ボタンを押した。
ビーーー
しばらくしてバスはお店も家もほとんどないようなへんぴな街のバス停で止まった。
え?さっきまで住宅街だったのに。まさか私が停めたところがこんなにも田舎だとは思わなかった。
すぐに降りてはみたものの、ここからどういったらいいのか分からない。
う〜ん……。一つ前のバス停まで歩こうか……。
寝起きでボーっとした頭で、バスが来た道を引き返してみた。
本当に何もない……。
退院後すぐに家に帰るから、入院セットしか入っていないカバンと貴重品だけを持って出てきた。
飲み物すらない……。そして売ってすらいない。
とにかく歩くこと一時間……。
こんなにバス停とバス停の間って距離があったのかな。
そもそも、私って眠ってたから、ここを通ったのかすら確信が持てない。
ただ大きな通りを歩いてきただけだった。
そんなことを思いながらも、なぜか自信をもって歩いていると、ようやく住宅街が見つかった。
良かった……。
自販機あるし、コンビニもある。
コンビニと言ってもよくある系列のコンビニではなく、とてもローカルな品揃えの少ないコンビニ。
今の私にはこんなコンビニがありがたいのだけど……。
携帯をパッと見ると、病院を出てから二時間が経っていた。
ん?時計の表示は出ている携帯だけど……。
まさかの圏外⁉︎
今のご時世に、圏外になるところがあるなんて……。
しかも自分の住んでる街の近くで。
一気に不安になり、このまま帰れるのか…泣きたくなった。
コンビニに入って、店員さんに聞いてみようとその場を歩いた。
水とパンを手に取ってレジへ向かった。
「あ、あの……。すいません。
ここら辺にバス停ってありますか?」
そう聞くと店員のおばちゃんは、
『もう少しこの道を歩いて行くとあるよ。でも、二時間に一本だから、待つと思うけど……。どこに行きたいの?』
「やごな病院の近くです。
やごな病院から乗ったバスで寝てしまって……。」
『えー!それは災難だったねぇ。あそこから出てるバスに乗ったってことは、乗ったバス自体を間違えたんだよ。
あそこからこの街に出るバスは、ほとんどあの病院の近くには止まらないんだよ。あの病院からここは一時間はかかるからね。気をつけて帰るんだよ。』
ぇえっ!そんなに離れてるの!?
そっか……。だからバスに乗って寝ても気づかなかったんだ。いつもならボタンの音で目が覚めるのに。
とりあえず、おばちゃんに言われた道を歩くことにした。