俺様社長と極甘オフィス
 ちらりと社長を窺うと、その顔は一言では言い表せないような複雑な表情をしている。私の推測が間違っていたんだろうか。

「お気遣い感謝するけど、その必要はないよ」

「そう、ですか」

 歯切れ悪く返すと、部屋に妙な沈黙が訪れる。このままでは昼休みが終わってしまう。どうしようか、と思っていると口火を切ったのは社長の方だった。

「いや、やっぱり不足している」

 きっぱりと先ほどの発言を訂正する社長に、私はそれなら、と続けようとした。しかしそれを社長が言葉を続けて制する。

「というわけで、藤野に充電させてもらう」

「私ですか?」

 目を剥いたまま、驚きのあまり抑揚なく返してしまった。これは、なんの冗談か、と思ったが、社長の瞳は真剣そのものだった。

「また、からかってます?」

「なにを? 俺はいつも藤野に対しては真剣だけど」

 その発言にあえて突っ込むことはしなかった。話が進みそうにないからだ。

「ちなみに充電って具体的にどうすれば……」

 おずおずと尋ねると、社長も腕を組んで考えるそうだなぁ、と考え始める。自分で言っておいて、今から考えるなんて。そして私と目線を合わさずにわざとらしく告げた。
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