俺様社長と極甘オフィス
「あー、もう、そんな顔しない。こっちこそごめん。いつも俺の言い方が悪いんだ」

「そんな社長は悪くありません。私の力不足です、申し訳ありません」

 慌てだす社長に私はますます申し訳ない気持ちになってきた。そこで頭を軽く振る。

「ちなみに、社長にとっておじいさまはどんな方でしたか?」

 気を取り直して話を戻す。今の私にできることは、社長のためにパスワードを探すことだ。前一氏は、私が秘書になったときには、すでに体調を崩されていて直接お会いしたことはない。

「そうだなぁ、ああ見えてユーモアある人だったよ。洒落好きというか」

「洒落、ですか?」

「そうそう、例えばこのビルの名前もB.C. square TOKYOだけど、このB.C.ってなんの略か分かる?」

「え?」

 私はそこで瞬きした。このビルは正式名称がB.C. square TOKYOであり、なにかが略されているなんて聞いたことがない。

 しかし言われてみれば、BとCにはそれぞれピリオドがついているし、意味がないのに並べているとも思えない。

「勉強不足で申し訳ありません。分からないです」

 すると社長がおかしそうに笑った。さっきの渋い顔よりも、こっちの方がよっぽどいい。その表情に少しだけ安堵する。
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