俺様社長と極甘オフィス
　最近、中性脂肪の数値が大変なことになっているとこぼしていた金本さん。第一印象は穏やかな熊のような人だと思った。あのお腹の肉はさわってみたい気もするけれど、もし抱きしめられるとなると。

　想像するだけで私の背中になにかが這った。いや、勝手に相手役で想像された金本さんに、なにも非はないのだけれど。私は一度社長から視線をはずして、改めて合わせる。

｢嫌ですよ。あなただから許してるんです。他の人にはさせません｣

　すると社長は大きく目を見張った。なんだか自分で言っておいて発言がむず痒くなり急いで背を向けようとした。けれど　それを阻むように正面から抱きしめられる。

　もう今日は帰るだけとはいえ、スーツが皺になってしまう。まずはそこが気になった。

｢よかった。藤野はアメリカでの暮らしが長いから、誰が相手でも、こんなことなんでもないことだったらどうしようかと｣

｢私はそこまでオープンな性格ではありませんよ｣

　私は社長にどんな心配をされているんだ、とそっちの方が気になる。そして社長は私を解放すると、素早く私の額に口づけた。本当に一瞬の出来事で、されたことを現実なのだと理解するまでに、いつもよりコンマ数秒遅れた。

｢ちょっ｣

｢遅いから送っていく。ほら、行くぞ｣

　私がなにかを言う前に社長はさっさと帰る段取りを始める。おかげで私はなにも返せなかった。どういうつもりなのか、これも充電に入っているのか。私よりも社長の方がよっぽどアメリカ式スタイルだと思った。
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