俺様社長と極甘オフィス
「いいね、これ。明日から毎日、会社で藤野に結んでもらうことにする」
「なに言ってるんですか、あまり世話を焼かせないでください」
おどけた調子で言う彼に、私は呆れて肩を竦めた。私にとっての社長はずっと正一氏のことだったので、彼を社長と呼ぶのも、実はまだ違和感が微妙にあったりする。けれども彼の私に対する態度は相変わらずだ。
「恋人も母親も必要ないな、藤野がいるなら」
「そういうことを軽々しく言わない方がいいですよ。後ろから刺されたらどうするんですか」
「なに、藤野、俺のことを刺すの!?」
仰々しく驚く彼に、私は冷静に突っ込む。
「どうしてそうなるんですか。社長が女性の扱いがお上手なのは十分に知っていますけれど、そんなことばかり仰っていると勘違いした女性に恨まれますよって話です」
彼は誰にでも優しい。取引先の重役の娘を紹介されることも多々ある。女性に想いを寄せられているのも何度だってそばで見てきた。
それでも彼はそんな彼女たちをけっして無下にはしない。いつも穏やかで優しいのだ。秘書とはいえ、こんな女子力ゼロで地味な私でさえ、女性扱いをしてくれるのだから。
「勘違いねぇ。藤野にしか言わないのに」
私は眉をつり上げた。本当にこの人はなにも分かっていない。そういう言い方が問題なのだが、言っても無駄のようだ。
「そうですか、それはどうも」
私は抑揚なく答えた。もうこの話は終わりにしよう。仕事の話でもないし。そのとき、前触れもなく手を取られる。
「どうしました?」
顔をあげると、いつになく真剣な顔をした社長がこちらをじっと見据えていた。秘書として、出すぎた真似をしただろうかと急に不安になる。
「なに言ってるんですか、あまり世話を焼かせないでください」
おどけた調子で言う彼に、私は呆れて肩を竦めた。私にとっての社長はずっと正一氏のことだったので、彼を社長と呼ぶのも、実はまだ違和感が微妙にあったりする。けれども彼の私に対する態度は相変わらずだ。
「恋人も母親も必要ないな、藤野がいるなら」
「そういうことを軽々しく言わない方がいいですよ。後ろから刺されたらどうするんですか」
「なに、藤野、俺のことを刺すの!?」
仰々しく驚く彼に、私は冷静に突っ込む。
「どうしてそうなるんですか。社長が女性の扱いがお上手なのは十分に知っていますけれど、そんなことばかり仰っていると勘違いした女性に恨まれますよって話です」
彼は誰にでも優しい。取引先の重役の娘を紹介されることも多々ある。女性に想いを寄せられているのも何度だってそばで見てきた。
それでも彼はそんな彼女たちをけっして無下にはしない。いつも穏やかで優しいのだ。秘書とはいえ、こんな女子力ゼロで地味な私でさえ、女性扱いをしてくれるのだから。
「勘違いねぇ。藤野にしか言わないのに」
私は眉をつり上げた。本当にこの人はなにも分かっていない。そういう言い方が問題なのだが、言っても無駄のようだ。
「そうですか、それはどうも」
私は抑揚なく答えた。もうこの話は終わりにしよう。仕事の話でもないし。そのとき、前触れもなく手を取られる。
「どうしました?」
顔をあげると、いつになく真剣な顔をした社長がこちらをじっと見据えていた。秘書として、出すぎた真似をしただろうかと急に不安になる。